学長ブログ2023.07.18
食と幸せ
食と幸せは新設された食創造学科1年生向けの私の授業である。
食品開発を幸福という哲学と結びつけて論じるという授業である。
駅で列車の時間を待つ暇つぶしに読んだ「暇と退屈の倫理学(ひまとたいくつのりんり学)國分功一郎著」という文庫本が超絶におもしろくてのめり込んでしまった。
不幸や幸福とは何かを扱っている。これを食に応用してみたいと思ったのである。
授業では、まず学生に自分の経験した「不幸」を洗いざらい発表してもらった。
想像以上に大量に出た。彼らも苦労している。
黒板いっぱいに並べられた不幸体験を分類すると、本が紹介している高名な哲学者の言う3つの形式の不幸とピタリ一致した。
1つ目は、待っても来ない電車を待つような、気の遠くなるような時間の不幸。
2つ目は、なんか、わくわくしない盛り上がらない不幸
そして3つ目は、理由がわからないが、なんとなく不幸。
これらを救う食品開発は可能かを授業のテーマにした。
第1の不幸を救うのは、インスタント食品群である。買い物や調理など気の遠くなるような面倒な時間を救ってくれている。
第2のわくわくしない不幸に対しては、ミシュランの星の高級料亭や、評判のお店、限定販売などでわくわく感が演出される。
そして、3番目の「なんとなく不幸」。思い当たる食品がある。「グミ」「柿の種」。心の隙間を埋めてくれる食品である。
哲学の表面をなでただけのような授業で、専門家に見られたら恥ずかしいが、学生はまあまあ面白かったと言ってくれた。